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14
Jul,2003,Monday.It is the 195day this year by the end of today.
悲劇
ようちゃんと遠距離をしていた23歳の彼はようちゃんの地元の人だった。あたしは名前を聞いたことがあってその苗字はとても珍しくて3人いた兄弟の名前もすべて似ていたので記憶にすごく残っている。彼は船乗りだった。
彼の影響でようちゃんはAPEやGOODENOUGHなんかを好むようになって、いわばようちゃんの中でなにかを変えるきっかけを作ったようなそんな人だったようにあたしは思う。
いつも電話では喧嘩ばかりしてたけれど最後には仲直りしてしまう。傍から見ていてあたしは嫉妬からかいらいらして仕方なかったのを覚えている。
勝手に流れるテレビのアナウンスに懐かしい言葉が混じっていてあたしのボーっとしていた頭が急にクリアになった。
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”青森県のH港から出たイカ釣り漁船が行方不明になりました。船に乗っていたのは・・・・・”
白字で下に行方不明者の名前が出る。3名だ。
その苗字がようちゃんの昔の彼氏と同じだった。
目を凝らしてよく見る。
3人の名前の漢字の下の文字が同じだ。
あたしはとっさに寒気がした。
年齢を確認する。
クリアな脳みそが何かに殴られたかのように再びボーっとし始めた。
あたしは何をしたらいい?
あわてて携帯を取ってみたものの、あれからずいぶんようちゃんに電話すらかけていない。
久しぶりの電話なのにあたしは何を言おうとしてる?わざわざこんなこと言わなくてもいいんじゃないのか?違うかもしれないよ?いろんな葛藤が頭を巡った。携帯を手にして30分あたしはそんなことを考えながら心臓がドキドキしてたまらなかった。それでもやっぱりいてもたってもいられない。およそ1年ぶりだろうか、あたしはようちゃんに電話をかけていた。
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13
Jul,2003,Sunday.It is the 194day this year by the end of today.
友達とは・・?
あんなにいつも一緒にいてあんなに仲良く見えてたのに今はもうその影すら薄れすぎて見えなくなっていたに違いない。
友達ってなんなのかすらよくわからなくなってきた。今まで深く、狭くな付き合いをしていたあたしですら本当に今心を許せる人はいるのだろうかと疑問を持ったりした。それでも唯一じゅんこちゃんは相変わらずいつも隣にいた。
変わらなかった。じゅんこちゃんの存在も不思議なもので離れても電話したりすることはなく、特に干渉しあうわけでもなく、微妙な距離感がやけに心地のいい友達だった。
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そのまま3年になった。あたしは一人暮らしをしてますます周りには同じ学校の友達がいなくなった。その代わり門限に縛られることもない。レポートや課題を他人のものを見せてもらったりしてやることはもうできないけれど結果的にそれは必要なかった。周りに人がいないから話に夢中になって夜中遅くまでおきてレポートをやっていたとかそういうのがなくなった。
門限がないから誘われればいつでも遊びにいけるようだった。
このころ今の相方と付き合い始めたばかりで彼が家に来る前には課題を終わらせておこうと思ったりして夜はひたすら看護計画を立て2人の時間には勉強しなくていいように自分で時間を調節していた。
あたしにも彼氏ができてもう、友達が云々っていうのがあんまり気にならなくなっていた。とにかく2人でいることが楽しくて仕方がなかった。ようちゃんのことは実習のグループも離れていたしめったに顔もあわせなくなった。たまに会えば軽く話をするだけで初めのころのように週末はどこかへ行こうとかそんな話は一切しなかった。無論電話なんて自分からかけることもなかった。
夏だっただろうか。日曜のアンビリバボーは怪奇特集が盛んに行われるようになって、テレビを見ながら課題をこなしていても一人の部屋では怖すぎて、でも見たくて、結局つけっぱなしで看護計画を立てていた。番組が終わると少しだけニュースをやる。あたしはそれをボーっと見ていた。
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12
Jul,2003,Saturday.It is the 193day this year by the end of today.
それから
きっと同じようにバイトをしているのだと思った。
だからと言って仕事に関して学校や寮であえて話をしたりすることはなかった。お互い閉鎖的で何か触れてはいけない傷があるかのようにあえて話しかけたりしなかった。そんな時間がずっと過ぎていった。相変わらずようちゃんは遠距離ながら彼氏とは続いてるようだったし、夏休みの帰省にはきっと2人にとってステキな時間だったに違いない。相反してあたしには帰っても誰もいない。いつもの家族の暖かい迎えがあるだけで特別な誰かが待っているわけでも何でもなかった。
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夏が終わってあたしは恋をしていたのかも知れない。ようちゃんをどこかでうらやましいと思っていたのかも知れない。たったひと時の時間だけ、特別に感じられる瞬間を夏の間に少し味わったその余韻が多分、あたしの中だけに残っていた。それを恋だと錯覚していたのかもしれない。好きな人がいないと不安なのではなく、誰かに必要とされているのではないかと思うことがやけにあたしの心に甘い香りを残していた。
けれどもそれはやっぱり錯覚で、それは一時期の快楽で、まるで流されるかのようで。
叶えようとは思ってはいなかった。だから自分から動いたりしなかった。もしかしたら携帯電話が鳴るかもしれないというあいまいな感情だけではどうにもならなかった。言葉なんて信用できない。
夏の余韻を忘れたころにあたしは再び恋をしていた。
このことに関してはLOVEテキスト序章の方で詳しく記載しているので割愛させていただく。
もう恋愛相談としてようちゃんに話しかけたりすることはなかった。その手の相談は「とも」にしていた。ともはようちゃんとあたしの共通のそれなりに親しい友人でもあった。彼女を架け橋にしようとは特に思っていなかったけれど、寮の部屋が隣同士になったのをきっかけによく行き来するようになった。
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11
Jul,2003,Friday.It is the 192day this year by the end of today.
偶然
お互いが一緒に買い物に行かなくなると、次の日学校に着ていく服が見た事がないものを着ていると思わず目が行った。彼女のセンスはいいと思う。そうして日々が過ぎるにつれてあたしの知らない服を着たようちゃんになっていくのをただ見ていた。
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嫌いだけど好きで、気になって仕方ない存在だったけれど一生懸命その思いを消そうと、平然と振舞うしかなかった。そしてあたしたちは2年になった。2年生になると寮にも慣れてくるし周りでアルバイト、アルバイトという声が飛び交うようになる。唯一自由な金曜と土曜にアルバイトをしようと沢山の子達がバイト情報誌を手にするようになっていた。あたしもこんな女だけの寮にいて学校が寮の下にあって、同じ建物の世界しか知らないなんて嫌だった。あの時はようちゃんが紹介してくれた彼という存在自体もこのままここにいるだけでは出来ない。そういう意味も含めてみんなアルバイトをしようとするんだと思う。あたしもフロムAを買ってぱらぱらとアルバイト募集の広告を見ていた。
5月に入ってバイトを始めた。
学校ではかっこいい人がいるとか、そういう話もちらほら聞こえていた。当のあたしは人見知りだしあんまりそういうのに軽軽しく一目ぼれとかそういうのはもうやめようってずっと前から思っていたことなのでそういう話の輪には入らずに遠くから声だけを聞いていた。ようちゃんも同じ様にアルバイトを探して採用されたみたいだった。
あれからずっと話をしていない。
そのせいか少し昔のアクティブな彼女に戻っていたような気がした。あたしは消して気にならなかったわけじゃない。だからバイトを始めてしばらく経ってから授業の休み時間に「あんたどこでバイトしてるの?」と聞いてみた。青山でやってるという彼女のそのバイト先の選択は青山っていうだけでものすごくお洒落なものに感じて少し嫉妬した。それから具体的に少しづつ話を聞いていくともしかしたら?という気持ちがふつふつ湧いてきた。実はまったく別々に口裏も合わせていないのにむしろ話もしていないのにバイト募集広告を見て見つけたバイト先が同じお店で店舗が違うだけだったのだ。
あたしは下北沢店だったし、ようちゃんは青山店だった。あまりに偶然過ぎてびっくりした。
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10
Jul,2003,Thursday.It is the 191day this year by the end of today.
嫌い
あたしは初めて出会った時のようちゃんが好きだった。
自分の好きなものがしっかりあって、行動力があって、自分の意見はしっかりいえて、そんな彼女が好きだったのに、何時しかその陰があたしの前だと酷く薄れてしまう。あたしは何でそうされるのかわからなかった。態度が違う事がもうすでにうざったくなって来て、冷たく突き放そうとすると泣きそうな顔をする。なんでこの人はあたしの機嫌をとろうとするんだろう?仲がいいって言っても、あたしが求めていたのはそんなんじゃない、もっとお互いが刺激し合える、良いところを吸収できる、何でも言い合える、そういうのを求めていたのに、求めれば求めるほどまったく逆になっていった。
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それもあたしと話をするときだけ、酷く甘えた声を出す。
あれほど毎日のように一緒にいたはずなのに、すでに耐え切れなくなっていた。交換日記すらあの彼と別れてからしばらくして止まってしまった。
おそらく一緒にいすぎたんだと思う。
まったく意図としていなかったこの状況や、ようちゃんの変貌ぶりにイライラは募っていく。部屋に帰るとじゅんこちゃんにいろいろ愚痴を聞いてもらった。あたしはあたしなりに考えて、これからもべったり一緒にいることはようちゃんにとって決していいことではないと思った。彼女はすごく魅力があると思う、あたしといることでそれが少しでも薄れてしまうのがもったいなかったし、あたしが求めているのはそんな彼女ではない。あたしは毎日冷たく接していた。
今思えば酷かったなあって思う。だけどそうすることでしか離れられないと思ったから自然とそうしてしまったんだとおもう。そして自然と少しづつ距離が空いていった。あたしは毎日じゅんこちゃんと朝昼版の御飯を食べるようになった。ようちゃんはようちゃんでクラスのほかの人と沢山喋るようになっていた。よかったけれど彼女の周りにはいつもいろんな人がいるようになってくるにつれて、自分が突き放したけれどやっぱりそんな彼女がうらやましいと思った。
あたしの周りにはいつもじゅんこちゃんしかいなかった。対照的だった。
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09
Jul,2003,Wednesday.It is the 190day this year by the end of today.
違和感
ようちゃんは、あたしがそんな彼と短い付き合いを終えてもなお夏休み前から彼氏がいて続いていた。
あたしは同い年の異性としか付き合った事がないけれど、当時ようちゃんの彼氏は23歳だった。それも東京にいるのではなく、ようちゃんの実家である東北に住んでいた。この寮にいれば遠距離になる。
しかしそれすら何の問題もないかのように淡々と過ごしていたように見えた。
ようちゃんの楽しそうに電話をする様子や、交換日記に書かれるそれはとても楽しそうで、あたしは自分が恋愛に対して、まるで敗者のようなそんな感覚を味わっていた。あたしが1つの別れを経験してもようちゃんたちは続いている、そのことは当たり前だけどうらやましくて仕方がなかった。
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ようちゃんの彼の影響もあってかそれまでこよなく古着(ガーリィ系の)を好んでいた彼女は一変して裏原宿系に移行し始めていた。あたしもそれらに興味があった。 a bathing apeやナンバーナイン,UNDERCOVER,ネイバーフッド、その辺のメンズライクなものに惹かれて裏原宿は買い物に行く上で必須の場所になっていった。
休みのたびにお洒落をして2人で買い物に出かけるのは楽しかった。某雑誌のスナップなんかに掲載されたこともあった。周りにはお洒落な人が沢山いて、街を歩くのは好きだった。声をかけられるのは何よりも嬉しい。お洒落な場所にいて目をつけてもらうのは田舎から出てきたあたしたちにとって誇りみたいなものだった。
とあるきっかけで情報誌のモニターになって何度か誌面に出たこともあった。毎日が楽しそうで、あたしとようちゃんは本当に仲がいい2人だと周りから見えていたに違いない。だけど何時からかあたしの記憶にはあいまいで覚えていないが、ようちゃんの態度が変わってきた事が気に入らなくなって来ていた。日々の積み重ねみたいなものだろう。
冷たくされたとか冷たくなってきたとかそういうのではない。多分ようちゃんがあたしを慕ってくれていたからそうなったんだと思う。何かあるとまるであたしが彼氏で、ようちゃんが彼女みたいな妙な甘えた声で接したりされるようになって、なんだかまったく意図としていないのにあたしのほうが立場が上みたいなそういう風に感じられるようだった。
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08
Jul,2003,Tuesday.It is the 189day this year by the end of today.
別れ
好きなのかなんなのか、すでに解らなくて苦しくて苦しくて仕方なかった。
それでもある日ようやく電話がかかってきてバイトの前に少しだけ会えるか、みたいなことを言われた。久しぶりに会えることにあたしは嬉しかった。初めて2人でゆっくり話をした公園であたしたちはまた再び会うことになった。授業が終わるのが待ち遠しくて仕方ない。あたしはこのたった2時間でもいいから、それでもいいから会いたいと思っていたからなおさらだった。授業が終わると急いで化粧をして地下鉄に乗り込む。新宿西口を出てあの公園に向かう。彼は暖かいコーヒーを持ってきてくれた。
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彼が切り出したのは別れだった。
なんとなく解っていたけど、認めたくなくて目を閉じてきた。何が悪いのかとか、どこがいけなかったのかとか聞きたいけれどやっぱり言葉が出てこない。そのわかりにつもり積もった言葉が涙となって溢れ出した。しばらくずっと泣いていた。苦しい胸のつかえが少しでも楽になるように、全部流れてしまえばいいと思った。こういうときに泣いたのは初めてだった。むしろこういう経験も初めてだった。
余計に辛くさせた。
彼と別れた後、真っ暗な夜の闇に浮かぶ新宿のネオンがまぶしくて仕方なかった。会社が終わった時間だと思う、人もものすごく増えている。あの静かな公園とはうって変わってすれ違う人が多くなる。あたしは駅に向かった。寮に帰るために。
公園から駅までがものすごく長く感じだ。彼と別れを告げた後はあたしは少し笑えていたし、涙も止まっていたはずだったのに、なぜか人とすれ違うほどにまたこみ上げてくる。あたしはうつむいて行き交う人の靴だけを見ていた。こんなところで泣いていたらきっと変に思われる。そう思った。必死でこらえればこらえるほど苦しくなった。奥歯をかみ締めてこぼれそうな涙を服の袖で拭った。
寮に帰るなりあたしは泣いた。ようちゃんに出かけることも告げてあったし、帰ったら真っ先にきてくれた。あたしは泣きながら説明した。あの交換日記に書かれたイイヒトという言葉は気休めに過ぎなかった。本質を見るのは自分しか出来ない。人の目に写った彼の像を捉えてもどうしようもないんだ。
それからようちゃんは一緒に泣いてくれた。
あたしたちはしばらく2人で泣いていた。
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07
Jul,2003,Monday.It is the 188day this year by the end of today.
苦しい
バイトが終わるだろうとか、家にいるだろうとかそういう時をあたしなりに想像する。
寮のベッドの中でカーテンを閉めて握り締める母が買ってくれた携帯。ボタンを押すとうっすらと明かりが差してあたしの顔を照らす。そのままアドレス帳の中にある彼の電話番号を探して選択する。緑の電話のボタンを押せばもうかかる状態のまま、あたしのなかの今まで溜め込んできた胸の中の重い息苦しい気持ちが動き出す。胸が苦しい。何もしていないのに、ただボタンを後1つ押せば繋がるのに、何でこんなに勇気がいるんだろう。何でこんなに切なくなるんだろう。
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このときは恋していると思っていた。見つめる携帯からあたしを照らす光がふっと消え時間が過ぎた事がわかる、こんなことを繰り返していても、ここでこんなに苦しい思いをしているあたしのことは彼は微塵も知らない。切なかった。だけどそれからもやっと押した緑のボタンを押してすぐに切ってしまった。何度もそんなことを繰り返した。着信が残れば向こうからかけてきてくれるかも知れないなんて淡い期待を抱いていた。だけれども折り返しの連絡すらくれなくなった。
何がそうさせたのかわからない。あたしはいつもうなずいたし、あたしはいつも彼のペースに乗ってきたはずなのに。言いたいことも我慢したのに。後に残るのはさらに胸を締め付けるような彼に対するいえない憤りの言葉たち。それが余計に胸を圧迫して、考えるだけで苦しくなる。
ようちゃんとの交換日記にもそのことを書いていた。一時は彼女の言葉に安心するけれど彼女の知らない、むしろあたしさえもわからない彼の事情みたいなものはヤッパリ不安因子でしかなかった。
イイヒト、という言葉を頼りに待つしかなかった。
そんな彼と出会ったのは9月の終わり頃だったろうか。
それから振り返れば長く感じた此れまでのさまざまな思い出はたった1ヶ月にしか過ぎないものだった。毎晩のように同じ携帯をみつめ、同じ様にボタンを押しては切る、わけもわからない胸のつかえに苦しくなると、すべてを忘れるようにイヤホンを耳に突っ込み、やさしい音楽を聴きながら無理やり眠る日々が続いていた。すでに、次の休みは会える?とかそんなことすら切り出せなくなっていた。
あたしは愚かだ。
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06
Jul,2003,Sunday.It is the 187day this year by the end of today.
イイヒト
少しの間恋愛をしないとこの思春期ともいえる時期では男女の成長も激しいと思うし、どうやら自分と違う性が何を考えているのかとか、全然わからなかった。
ようちゃんが紹介してくれた人の一人と付き合うようになった。告白したのは向こうだった。あたしにはそれがただ、本当に好きなのかとかそんなものは良くわからなかったし、あたしは別に嫌いではなかったし、知っていくうちに好きになればいい、もっと好きなるかもしれない、そういう気持ちだった。何にせよ、過去に好きになりすぎて自分から話すことも出来ない、思ったことをいえない、何も出来ない、そういうのはもうごめんだった。
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きっかけはあたしと付き合ったことなのかも知れない、違うかもしれない。
彼は下宿していた家を出て一人暮らしをするといった。それからあたしたちが会うのはその家探しのときだった。あたしは寮に住んでいるし、まだバイトをしていなかったから泊まりに行くのは同じ高校の友達のところばっかりで、彼が家を持つということはある意味新しい居場所が増えるという少し嬉しい気持ちでもあった。不動産屋に行って物件を見て一緒に中を見に行く、そんな事が数回続いた。
それから彼の新しい家が決まった。音楽の趣味が少しだけ合ったあたしたちは持ち込んだCDを聞きながらコタツで喋ったり、御飯を食べたりして過ごした。だけれども今となっては実際に彼がどんな人だったかさっぱり思い出せない、というよりも説明できない。
思い出すことといえば、夕日が落ちて暗くなり、あたしが帰らなきゃいけない時間が迫る頃、ふいにキスをされて、そのままかすかに見えた天井とロフト、流れ続ける音楽。それだけだ。
好きだったかも知れない、だけれどもそれが本当に好きだったなんてとても言えない。むしろただの普通の記憶の断片に過ぎない。
付き合い方すら知らないあたしは本当にどうしようもなくて、些細なことでびくびくして、顔色をうかがって、相手の思うように好かれるように無理やり自分を押し殺していた。苦しかった。口に出したい言葉が、様子を伺ううちに色褪せていってあたしの唇は動かないままそのまま胸に積み重なる。言いたかった言葉が積み重なり、重くなっていく。
どうして言えないのだ。顔色を伺うばかりのあたしはこの言葉を言ったらどう思うか、変に思わないか、そんなことばかり考えていてもう何を話していいのかさえ解らなくなっていた。あたしはこのことを話すのはもちろんようちゃんだった。彼女は彼の友達。彼を知っている唯一の友達。
だけど彼女が知っているのは恋人としての彼じゃない、友達としての彼。「いいひと」というレッテルを貼られた彼だけれどもあたしには良くわからなかった。間もなくあたしたちはすれ違う。あれほど一緒にいる事が出来たはずの日も過去になっていく。電話をしても寝ている、あたしが休みの日にはバイトだといって出かけている、ほんの少しでも1時間でも2時間でも会いたいなんて思っても、それすら口に出せないあたし。何をしているんだろう。
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